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三代「カプチーノ(EA21R)」

絶対後悔しない車選び。

この三代目になるカプチーノは、周りの人たちに「本当に車の買い物か?」と言われる買い方をして、アッと驚かせ、家族を呆れさせて、しかし自分一人は幸せだった。
この当時、というか現在もだが、実は買って良かった、という買い物をしたことがほとんど無い。車やパソコンのような高いものに限らず、損得や使い勝手を事細かに考えては、結局自分が欲しかった理由、理由と言うより素直な自分の気持ちを忘れてしまい、買ってから何か違う、と気付くのだ。
酷いときは買ったまま袋から出さずに捨てる品物もあるぐらい、状況は悪かった。
そんな状況下で、このキャンディレッドに塗られたカプチーノだけは、胸を張って「買って良かった」といえた。それは、車の程度がいいとか、高年式だとか、チューニングが優れてるとか、そんな所とはまったく別の次元で、「俺の、見つけた」と言える、そんな車だった。

細かくチューニング内容を書くと、

スズキスポーツ N1コンピュータ
ARC インタークーラータイプIII
ハーフウェイ インタークーラーパイプ
スズキスポーツ コンプリートサスペンションキット(五段調整)
APP ステンメッシュブレーキホース
エンドレス ブレーキパッド
スズキスポーツ 6点式ロールバー
永井電子 ウルトラプラグコード
USレーシング フロントバンパースポイラー&フォグ
柿本改 マフラー(車検対応)
スズキ純正 トルセンLSD
スズキスポーツ フロントタワーバー

と、これだけのチューニングがしてあった。
さらにホイールはワタナベの8スポークに変わっていた。購入時に交換したのはVRリミテッドから引き継いだナルディのステアリングとJVCのMP3対応オーディぐらいだ。
知ってる人が見ればすごいと言える内容だと思う。
馬力は80~90psぐらいか。

この車でさっそく、小千谷の友人経由で福島の猪苗代湖まで行ってきた。友人は「黙って曲げると曲がらない車」と評した。サスを硬めにセッティングすると荷重移動を起こしにくく、ドアンダー傾向になった。慣れるとステアリングの角度をアクセルオフを同時に行う事で曲げられる様になったが、とても峠どころか一般道路を乗りこなせなかったので、結局サスは柔らかめの2にセットして乗っていた。高速道路では80km/h以下か、ぬあわkm/h以上でないとエンジンからの振動が激しくて長時間乗っていられなかった。その変わり、ぬおわkm/h以上の連続航行を可能にするとんでもない車になっていた。トバすほどにハードなセッティングは生きてきた。
尼崎の友人は1600ccのメカチューンなみのパワー感と伸び、と評して嬉々として運転していたが、三重の友人は身長が高すぎて、ヘッドレストが後頭部を、ロールゲージが額を固定するという危険極まりないドライビングポジションとなり、最初の信号でブレーキを踏んで「ゲッ」と言ってから、信号があるたびに恐々としていた。車は非常に気に入っていたが、乗る人を本当に選ぶ車だと思った。特にロールゲージによる狭さは、それまで乗れていた人たちが半分に削られた。これでメットを被ってサーキットを走る、なんて想像できなかった。
冬、大阪の友人を拾って、名阪経由で三重に行く事になった。名阪は雪が積もり始め、リアが簡単に滑り出した。マジでヤバいと思った。隣に座っていた友人は「うまいもんっすね」と言っていた。いや、一歩間違ってたらガードレールに突っ込んでるんですけど、とは今は言えなかった。

冬になると、エンジンが突然ストールする癖が出だした。どうも大気密度かなんかが合わなくてエンジンストールするようだ。赤カプを買ってすぐに顔を出したディーラーに持って行くと、整備の方が吸入量を調整してくれ「カプチーノはなぜか夏と冬で設定を変えないと調子が悪くなる方が多いんですよ」と言った。話をしていると、どうもこのディーラーはカプチーノ乗りの人がよく預けていくそうで、自然とカプチーノに強くなったとか。営業さんも「ああっ、あのめっちゃ綺麗なカプチーノの人」と言って寄ってきた。この色はうちじゃ出せない色なんで、とても印象が深かったとか。ちょうど12ヶ月点検もあり、ここで予約をお願いし、来週日曜にきっちりと見てもらう事に決めた。最初はお金の話は出なかったが、点検も兼ねて出しますので、きっちり見てやって下さい、とこちらからお願いした。

土曜日。
友人を訪ねに行った帰り、夕方から雪が降り出したので、早く帰らないとヤバいと思っていた。タイヤはノーマルだし、名阪でのスケーティングも思い出されて、あれ以上の積雪でしかも峠道では正直コントロール出来ないと思った。山に近づくほど雪は積もりだし、正直どこかのガソリンスタンドかカー用品店でスタッドレスに換えるか、戻るかと思った。しかしカー用品店は無く、タイヤを扱ってそうなガソリンスタンドも見つからないまま、スキー場が近くにあるような峠道にさしかかった。戻るという選択肢も、戻る最中に雪でスタックしそうで、しかも翌日には予約した点検もあると思いなおし、道路が水でとりあえず雪の排水を行っていたので、それを信用して進む事にした。当時、すでに場所によってはアンダーフロアに雪があたり、フロントスポイラーは雪かき状態でもあった。今思えば愚行も甚だしいと思う。山の中腹でトンネルに変わり、雪の無い道路を満喫して、トンネルを抜けた。その先はゆるい右の下り、そして橋がかかっていた。まったく雪の排水はされず、速度はきっちり落として進入したつもりだったが、トンネルを抜けたとたんに滑り出し、対向車線をゆっくりと車体をスピンさせながら回って行った。正直、ここは回るままに任せて、対向車線側でハーフスピンが終了、そのまま戻ってトンネルの中間地点でやりすごすしかない、と考えていた、その時。ダンプがホーンを鳴らしながら対向車線を登ってきた。こちらはハーフスピンの途中。助手席側のウインドウを通してダンプのドライバーを見たが。相手のドライバーはハンドルを切る事も出来ずに硬直した表情で突っ込んできた。実はダンプのドライバーの行動は正解で、直進しないとダンプが横転の危険があった。それを理解し、しかしスピンに任せていてはダンプを避けて対向車線を超えて登坂車線に抜ける前に激突すると確信し、アクセルを煽って、強制的に車体をスピンさせた。緩慢なハーフスピンから完全に対向車線を走行する姿勢に一瞬もどり、そのまま走行車線をスピンしながら戻っていって、回っている最中にダンプが脇をすり抜けた。よく当たらなかったと本気で思ったが、そのままでは相当な速度がついたまま橋の欄干に助手席側からぶち当たって谷底に落下する、と自覚し、なんとかそのままスピンを持続させて走行車線側で止まろうとカウンターステアを当てながらアクセルをコントロールしていたら、スピンの途中でフロントが激しく何かに激突し、乗り上げて、欄干の手前50cmぐらいで静止した。
なんと、高さ20cmほどの歩道があったのだ。それがスピン中には理解できないぐらい、雪は積もっていた。現状を確認し、走行できないと判断して、警察に連絡。たまたま通りがかった人がJAFの委託業者だったので、レッカー移動をお願いし、好意に甘えて代車を貸してもらい、四駆の軽で自宅まで帰った。雪道にスタッドレス、それにアルトの生活四駆とはいえ、四駆はすごいと思った。カプチーノはまたもフロントが大破してしまった。前回より室内が壊れなかったのは、ひとえにロールゲージのおかげだった。

日曜日、ディーラーに代車で行き、カプチーノが事故現場に近い整備工場に入っている事を告げた。整備と営業の方は、ただ身の安全を喜んでくれ、現場まで車を引き取りに行ってくれた。所長にバレると内緒、という事で無料にまでしてくれた。
赤カプの修理見積もりは75万を超えた。全損が90万だったので修理するか悩んだが、雪の恐怖と、周りから乗るのは止めてほしいと言われ、結局は金を取る事にした。75万も修理して、ちゃんと走る様になるのか不安も強かった。赤カプは友人のつてで板金工場に引き取ってもらった。こちらもそこそこの金になり、結局買った価格に近い金額が帰って来た。赤カプを売ったのにはもう一つ理由があり、実は継続してずっと車のローンを払っていたのを、ここで一度清算したいと思ったのだ。残りのローンをすべて支払い、手元に35万が残った。次の車はとりあえず、この範囲で買う事にしよう、というのが自分の思いだった。

二台目のVRリミテッドは憧れと書いたが、この三台目カプチーノは清算だった。
買って後悔した事は無かった。この車なら全てが許せた。
短い期間だったが、前のカプチーノでやりたいことを、全てやったと思った。
絵に描いたチューニングは最初から出来上がっていた。積極的にオープンにもした。赤カプからは近所に行く事も苦痛では無かった。渋滞は嫌だったので、相変わらず臨機応変な移動手段を利用したが、少なくとも行きたくても行く気になれない、というマイナスな気持ちでは無かった。
青カプを失って、分身を失って、立ち止まった自分が、赤カプを手に入れて動き出したと思った。
VRリミテッドは立ち上がる勇気をくれて、赤カプがやり直しをさせてくれた。
赤カプは全てをプラスにしてくれた。そして出来た自分があった。だから、赤カプにはさよならと言えた。別れがクラッシュだったのは申し訳無かったが、俺は赤カプに乗って、そして別れて、やっと青カプからも卒業したと思った。
残滓の念は無かった。
付き合ってくれてありがとう、ただそれだけだった。

2003年、3月。
免許を取った目的を終えて、車選びは迷走する。

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コメント

カプチーノに乗りたいと考えています。
カプチーノのクラッシュにまつわる記事を読み漁っていたところでしたので、いたく感動しました。

投稿: ぜいたく | 2016年5月 1日 (日) 21:43

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